「目が悪い」とは？

「目が悪い」と一言で言っても、人によってとらえ方は様々です。ここでは「屈折異常」により「見え方が悪い」状態について解説します。屈折異常には、「近視」のほかにも「遠視」や「乱視」があり、どのように見えづらいのかはそれぞれ異なります。
人間の目に入った光は、角膜と水晶体で屈折して、網膜の上に焦点を結びます。そして視神経を通じて信号が送られて、脳で映像として認識しています。目がピント合わせをしていない状態の時に、遠くからやってきた光が網膜上に焦点を結ぶ状態を「正視」といいます。この「正視」の状態のとき、最も「よい見え方」を得ることができます。
これに対し、焦点を網膜上の一点に集めることができない状態を屈折異常と呼び、「見え方が悪い」と感じる原因に繋がります。

（イメージ図）

目が悪い人の世界ってどんなの？

近視になるしくみ

近視があると、近くのものはよく見えますが、遠くのものはぼやけて見えにくくなります。このような見え方になってしまう理由は、網膜より手前で焦点が形成されてしまうためです。
近視には「軸性近視」と「屈折性近視」があり、それぞれしくみが異なります。
軸性近視では、眼球の奥行き（眼軸長）が長いことが原因となっています。角膜や水晶体の屈折力が正視眼の人と同等であっても、眼球の奥行きが長くなると、焦点が網膜より手前で形成されてしまいます。
一方、屈折性近視では、角膜や水晶体が通常よりも光を強く屈折することが原因となっています。網膜の位置がとりわけ奥にあるわけではなくても、光の曲がり方が強すぎるため、焦点が網膜より手前で形成されてしまうのです。

遠視になるしくみ

遠視の人は「遠くがよく見える」と誤解されがちですが、実際には遠くのものも近くのものも見えづらく、常にピント合わせが必要なため目が疲れやすいといわれています。遠視の見えづらさが生じる原因は、網膜より後方で焦点が形成されてしまうことにあります。
遠視にも、「軸性遠視」と「屈折性遠視」があり、それぞれしくみが異なります。
軸性遠視は、眼軸長が短いことが原因となっています。眼軸長が短いと、角膜や水晶体の屈折力自体が正視眼の人と同等であっても、焦点が網膜よりも後ろで形成されてしまうのです。網膜上で焦点を形成しないため、ぼやけて「目が悪い」状態になります。実は、赤ちゃんの頃は誰でも眼軸長が短く遠視の状態で、10歳頃には大人と同じ長さに成長します。これに伴い遠視も改善されていきます。

*10歳以下の子どもにも近視が見られる場合もあります。

一方、屈折性遠視は角膜や水晶体が正視の状態よりも光を弱く屈折することが原因です。

乱視になるしくみ

乱視は、大きく「正乱視」と「不正乱視」に分けることができます。
正乱視とは、角膜がラグビーボールのような形に歪んでいて、カーブの強さが方向によって異なるため、焦点が網膜上の一点に集まらない状態のことです。縦軸と横軸を通る光が焦点を結ぶ位置が異なるため、ものがぼやけたり二重に見えたりします。歪みの方向には大きく分けて縦、横、斜めの3タイプがあり、それぞれ見え方が異なります。原理的には正乱視は眼鏡でもコンタクトレンズでも矯正が可能です。
一方、不正乱視とは、角膜や水晶体の疾患などによって光が不規則に屈折してしまう状態のことをいいます。不正乱視は、ハードコンタクトレンズでないと視力矯正ができない場合もあります。

近視になる原因は？

生活習慣や環境が原因で、見え方が悪くなってしまうこともあります。それだけでなく、近視には遺伝などの要素も複雑に絡み合っているため、原因の特定はできていません。また、近視の「治療法」もほとんどありません。したがって、近視は「予防」することと「進行を抑制」することが非常に大事になってきます。
近年、子どもは「太陽の光を十分に浴びる」ことで近視を抑制することができるということがわかってきました¹⁾。近視は眼軸（眼球の奥行）が伸びることで進行していきますが、3,000ルクス以上の光を1日約40分浴びるとこの眼軸の伸びが抑えられると報告されています²⁾。生活環境の変化や、テクノロジーの浸透によって、子どもたちが外で遊ぶ機会が少なくなっています。子どもの健全な成長のためだけでなく近視を抑制するためにも、外に出て遊び、太陽の光を浴びる時間を増やすことが大切です。

屈折異常以外で見え方が悪くなることも

ここまでで解説した屈折異常のほかにも、見え方が悪くなってしまう原因として以下のようなものが挙げられます。

加齢

誰でも年齢を重ねると、近くのものが見えにくくなる「老眼（老視）」が起きます。老眼の原因は、加齢に伴って水晶体が次第に固くなっていくことで起こる「ピント調節機能の低下」です。
若いころは見え方に問題がなかった人でも、40歳ごろから手元の細かい字が読みづらいと感じることが多くなります。また、近くから遠く、遠くから近くへと、違う距離にあるものを見ようとする際、ピントが合うまでに時間がかかるようになります。このような症状が次第に進行していき、一般的に45歳くらいになると老眼鏡が必要になると言われています。
老眼はゆっくりと進行するため、気づきにくいことが多いですが、放置しておくと眼精疲労などが重なり、ひどくなると目以外の部位にも不調をきたすことがあります。老眼の症状が現れたら、定期的に眼科を受診して、適切に対処することが大切です。

目の病気

白内障、緑内障、加齢黄斑変性症、ぶどう膜炎などの病気が原因で見え方が悪くなっている場合もあります。これらの疾患は、発見・治療が遅れると失明に至ることもあるので、早期発見が大切です。見え方に違和感がある場合は、早めに眼科を受診しましょう。

視界がぼやける原因は？目がぼやける、かすむ場合の対処法は？　についてはこちら
https://acuvuevision.jp/article/299

快適な見え方を維持する方法とは？

眼精疲労やドライアイを防ぎ快適な見え方を維持するには、以下のような対策法があります。

目を休ませる

パソコンやスマートフォンを使用する際には、こまめに休憩を取り、目を休ませてください。連続して1時間作業したら、15分くらいの休憩を取りましょう。遠くの景色をぼんやり眺めるのもおすすめです³⁾。ストレスも疲れ目の原因となりますので、体を動かすなどリラックスする時間も設けるようにしましょう。

生活習慣や環境を見直す

電子機器の画面を見ているときには、まばたきが減るため、目が乾燥して疲れやすくなります。意識的にまばたきをする、部屋の湿度を保つなどして、目が乾燥しないように注意しましょう。目の乾燥を和らげる目薬を使うのもよいでしょう。
また、パソコンを使った作業を行うときに、窓から入る光がモニターに映り込むと目に負担がかかります。ブラインドやカーテンを閉めて、光が映り込まないよう調整しましょう³⁾。
ドライアイの方は、眼科を受診して適切な治療を受け、症状を改善することが大切です。その上で、乾燥から目を守るための対策をしましょう。

コンタクトレンズやメガネの度数が合っているか確認する

度数が合わないレンズを使用し続けると、快適な見え方が実現できないだけではなく、眼精疲労の原因にもなってしまいます。メガネやコンタクトレンズを使用する場合には、必ず眼科を受診して、自分の目に合ったレンズを処方してもらいましょう。度数が適正かどうか定期的にチェックを受けることも重要です。目の状態や見え方は、時間が経つと少しずつ変化していきますので、見えづらさを感じたら早めに眼科を受診しましょう。

まとめ

なぜ「目が悪い」状態になるのかについては、まだわかっていないことも多くあります。また、屈折異常以外でも、見え方が悪くなってしまうことがあります。見え方に違和感のある場合は、放置せず眼科で検査を受けるようにしましょう。また、コンタクトレンズやメガネで視力を矯正する場合も、眼科医の処方・指示に従って使用してください。

参考文献

1. Rose K. et al., Ophthalmology;115(8):1279-85, 2008.
2. Lingham G. et al., Br J Ophthalmol; 104: 593-9, 2020.
3. 令和元年7月12日付け基発0712第3号　情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて　厚生労働省労働基準局編

参照サイト

• 公益財団法人 日本眼科学会 近視・遠視・乱視
  https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=28
• 公益社団法人 日本眼科医会 子供が近視といわれたら
  https://www.gankaikai.or.jp/health/39/index.html
• 公益財団法人 日本眼科学会 ドライアイ
  https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=9