緑膿菌とは? 原因や症状について解説〜角膜の傷から感染するとどうなる?
緑膿菌はどんな菌?
緑膿菌は私たちの生活環境に広く分布している菌の1つで、なかでも洗面所やトイレなど水回りの湿った環境に多く生息しています。増えると独特のにおいを放つという特徴を持った菌です。健康な人であれば基本的に緑膿菌に感染することはありませんが、病気の治療などにより免疫力や体力が低下していると感染してしまうことがあります。目への感染についても通常は心配ありませんが、角膜に傷がついていたり、免疫が弱くなっている状態では、感染してしまうことがあります。
緑膿菌の症状
緑膿菌に感染して炎症を起こすと、初期の段階では、目が痛む、充血するなどの症状がみられます。すぐに眼科にいけないなどで感染が進んでしまうと、角膜の表面をおおう上皮細胞が欠損し、より深い層まで炎症が及び、角膜潰瘍に至ります。角膜潰瘍は、治癒した後も角膜に濁りが生じて、その場所によっては、矯正視力がでない、という後遺症をのこしてしまうこともあります。
緑膿菌の感染経路と原因
緑膿菌に感染してしまう原因
緑膿菌感染症は、コンタクトレンズの使用法やケアが不適切な人に多くみられます。例えば、ワンデータイプのソフトコンタクトレンズを数日〜数週間にわたって使用している人や、レンズケース内の保存液をあまり交換しない人に、緑膿菌の感染が多いことがわかっています*1。実際に、感染症を起こした人のレンズケースから保存液を取り出して培養してみると、非常に高い頻度で緑膿菌などの菌が検出されることから、レンズケースの汚染が感染原因の一つではないかと考えられています*1,2。
緑膿菌の感染経路*2
汚染されたコンタクトレンズを装着することで感染してしまう場合が多いとされています。特に、コンタクトレンズのレンズケースを水回りに放置すると、緑膿菌がケース内に混入しやすくなるため、コンタクトレンズとともに緑膿菌を目に入れてしまう可能性が高まります。汚染されたコンタクトレンズを装着した際、角膜の表面に傷などがあると、そこから緑膿菌が入り込み、角膜感染症を引き起こしてしまうのです。
緑膿菌が引き起こす病気
緑膿菌が引き起こす問題の大部分は「日和見(ひよりみ)感染症」です。日和見感染症とは、体のどこかに異常があったり免疫力が弱っていたりする場合にだけ発症してしまう感染症のことをいいます*3。目の場合、涙の分泌や成分に異常がある人や、角膜に傷などがある人では、緑膿菌感染が起こる可能性が高くなります。
なかでも、緑膿菌による角膜炎の多くは、汚染されたコンタクトレンズ装用が原因であると言われています。コンタクトレンズを装用することでドライアイになりやすい人がいることに加え、コンタクトレンズの装用によって角膜表面が傷ついてしまうという背景もあります*4。コンタクトレンズの扱い方には注意し、しっかりと感染対策をしましょう。
緑膿菌の予防方法は?
緑膿菌の感染を防ぐためにも、コンタクトレンズを適正に使用して細菌を目の中に持ち込まないようにしましょう。コンタクトレンズを扱う前に手指を石けんで洗う、使用期間を守る、目に傷などがあるときは装用を中止する、コンタクトレンズを装用したまま就寝しない、2週間交換タイプの場合はコンタクトレンズのこすり洗いを励行する、レンズケースを洗って清潔な状態に保つなど、正しくコンタクトレンズを使用することが大切です。また、定期的に眼科で検査を受け、早い段階で目の傷などがないかを確認することも重要です。
~新しいソフトコンタクトレンズ用消毒液 マルチパーパスディスインフェクティングソリューション(MPDS)のご紹介~
これまで、2週間交換タイプのソフトコンタクトレンズの消毒液としては、過酸化水素製剤、ポピドンヨード製剤、マルチパーパスソリューション(MPS)の3つが使われていました。なかでもMPSは、ひとつの液でソフトコンタクトレンズの洗浄、すすぎ、保存、消毒をすべて行えるため便利な消毒液です。しかしMPSは消毒効果が比較的弱く、正しく使わなければ角膜感染症などのトラブルの原因となってしまうという点が短所でした*5。近年、MPSよりも消毒効果が高く、多くの細菌、真菌に対して過酸化水素タイプの消毒液と同等の消毒効果を発揮するソフトコンタクトレンズ用消毒剤であるMPDSが発売されています。MPDSは、使い方はMPSと同じですが、優れた消毒効果を発揮するだけでなく、タンパクや脂質の汚れもしっかりと落としてくれます。
アキュビュー® ブランドからは、MPDSのアキュビュー® リバイタレンズ® が発売されています。ソフトコンタクトレンズとの相性が良く、ソフトコンタクトレンズユーザーにおすすめの消毒液です。
緑膿菌の治療方法
通常は、抗生物質の点眼薬を用いて治療します。緑膿菌感染症の治療では、短い間隔で何度も点眼を行うことが多いです(1時間に1回など)。重症の場合は、点滴や内服薬による治療も行います。薬物治療で治らない場合や、角膜に強い濁りが残った場合には、角膜移植を行うことになります*6,7。
緑膿菌は非常に病原性が強いため、対応が遅れると失明してしまうこともあります*8。異常を感じたら、早めに病院を受診してください。
まとめ
緑膿菌感染症は、角膜の表面だけではなく、より深い層まで症状が進行する可能性があります。予防するためにも、眼科医の指示のもと、コンタクトレンズを正しく取り扱いましょう。
- *1 松原倫子他、日本職業・災害医学会会誌60 182-187, 2012
- *2 江口洋、あたらしい眼科26(9) 1187-1192, 2009
- *3 NIID国立感染症研究所(https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc.html)
- *4 医療情報科学研究所編、病気がみえるvol.12眼科、株式会社メディックメディア、2019年
- *5 日本コンタクトレンズ学会(http://www.clgakkai.jp/ )
- *6 中澤満他、標準眼科学第14版、医学書院、2018年
- *7 感染性角膜炎診療ガイドライン第2版、日本眼感染症学会、2013年
- *8 公益社団法人 日本眼科医会(https://www.gankaikai.or.jp/health/34/09.html)