かすみ目とは?目がかすむ原因を解説
かすみ目・目がかすむとはどんな症状?
「ものがかすんで見える」とは、いったいどのような症状のことを言うのでしょうか? 一般的には、以下のような症状がみられたときに、「目がかすむ」と表現する人が多いようです。
- 霧がかかったように見える
- 膜がはったように見える
- 色が薄く見える・色の差が分かりにくい
- 見たい物にピントが合わず、輪郭がぼやけて見える
- 物の輪郭がゆがんで見える
- 見えにくい部分がある・視野が欠けている
かすみ目の仕組み
「ものを見るしくみ」のどこかに異常が起きると、ものがかすんで見えることがあります。私たちの目の構造や各部位のはたらきを知ることで、「ものを見るしくみ」の異常が原因でかすみ目が起こるメカニズムをよく理解することができます。
私たちの目の内部は、図のような構造になっています。
私たちが「ものがしっかり見える」ためには、外からの光が次のような順序で脳へ到達する必要があります。
①外からの光が涙と角膜を通過、同時に屈折して瞳孔から目の奥に入る。
②水晶体が光をさらに屈折させる。遠視の人や、近くを見る時には水晶体が厚さを増し、より強く屈折させる(ピント調節)。
③屈折した光が硝子体を通過し、網膜の黄斑上に焦点を結ぶ。
④網膜に届いた光の情報を視神経が脳へと伝える。
これらの過程のどこかに問題が起こると、ものがかすんで見えることがあります。具体的には、次のような異常が起こった場合に、かすみ目が生じる可能性があります。
- 目の表面の涙の層が不安定になる。
- 涙液に異常が生じる。
- 通常は透明である角膜や水晶体、硝子体が濁る。
- 水晶体の厚さ調節(ピント調節)がうまくいかない。
- 網膜や黄斑、視神経、脳に障害が起こる。
かすみ目の原因 1,2)
かすみ目はあらゆる場面で起こります。かすみ目には次のような原因が考えられます。
目の乾燥
長時間パソコンやスマートフォンを使用していると、無意識にまばたきの回数が減ります。すると目が乾きやすくなり、目がかすむ症状があらわれることがあります。
ドライアイ
ドライアイとは、涙の量や質の問題で目が十分にうるおわなくなった状態をいいます。
涙は、目をうるおし乾燥などから守る役割があるとされています。また、角膜と一体になって光を屈折させる、という役割も果たしています。ところが加齢や炎症、コンタクトレンズの使用などにより、目をうるおしている涙が不安定になり、乾燥感や疲れ、かすみ目といった症状につながる場合があります。
ドライアイとは?症状・原因・治し方をご紹介! について
https://acuvuevision.jp/memamori/eye-health/317
眼精疲労・VDT症候群
眼精疲労とは、目を酷使しすぎた結果、視野がかすむ、目が痛い、まぶしいなどの症状が現れ、休息や睡眠をとってもこれらの症状が十分に回復しなくなった状態のことをいいます。ストレスなどが原因で生じることもあり、ひどい場合には、頭痛や肩こり、吐き気などの全身症状がみられることもあります。また、デジタル機器のディスプレイ(VDT:ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)の長時間使用に伴うVDT症候群(眼がかすむなどの症状)にも注意が必要です。
VDT症候群・眼精疲労とは?自律神経への影響は?症状を解説 について
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調節緊張・老視(老眼)
調節緊張とは、目のピント調節機能を担っている毛様体筋の機能が障害された状態のことです。遠くのものにピントが合わなくなり、視界がかすんで見えるようになります。
一方、老視(老眼)は、加齢に伴って水晶体が硬くなるため厚みが増しにくくなり、近くのものにピントが合わせにくくなった状態のことを言います。典型的な症状は、近くのものが「ぼやける」「かすんで見える」というものです。老眼鏡を使うと近くにピントが合うようになりますが、老眼鏡をかけたまま遠くを見ると視界がぼやけたり、かすんで見えたりすることがあります。
屈折異常・不適切矯正
近視・遠視・乱視などの屈折異常が未矯正の場合、程度によっては全体的に視界がぼやけたり、かすんで見えたりすることがあります。また、度数の合っていないメガネやコンタクトレンズを使用していると、当然見えにくく、かすみ目の原因になります。
コンタクトレンズの汚れ
コンタクトレンズのケアを怠るなどして、レンズが汚れた状態で使用していると、視野がかすんで見えることがあります。正しく使用していても、結膜炎など目の病気があるとレンズが汚れやすいため、目がかすむように感じることがあります。
また、コンタクトレンズが汚れているのに気づかず使用していると、炎症を起こしてかすみ目などの症状が現れてくることもありますので、コンタクトレンズは常に清潔に扱ってください。
白内障
白内障とは、水晶体が白く濁ってしまう病気です。目の奥に光が届きにくくなり、目のかすみやまぶしさを感じることがあります。主な原因は加齢による代謝障害や酸化ストレスが原因と考えられており、喫煙や紫外線は危険因子となります。
初期には、“かすみ目かな?”と感じる程度ですが、進行してくると、矯正視力(メガネやコンタクトレンズで矯正した視力)が落ちてきます。
白内障とは? について
https://acuvuevision.jp/memamori/eye-health/13
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、眼球全体を覆っている「ぶどう膜」という構造に炎症が生じる病気のことです。大半が原因不明なのですが、自己免疫疾患や感染症などによって引き起こされることも多いです。症状は、「視野がかすむ」ほか、「目が痛い」、「まぶしく感じる」、「視野に小さい虫のようなものが飛んで見える(飛蚊症)」などさまざまです。症状が片目だけに出ることもあれば、両目に出ることもあります。
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性とは、加齢により網膜の中心部(黄斑)に障害が生じる病気です。50歳以上で発症することが多いと言われています。視野の中央部がゆがむ・かすむなどの症状からはじまり、さらに進行すると、視野の中央部が暗くなったり、まったく見えなくなったりします。
加齢黄斑変性 について
https://acuvuevision.jp/memamori/eye-health/26
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病が原因で引き起こされる合併症の1つです。糖尿病を治療せずに放置していると数年~10数年で発症します。治療をしている場合であっても、糖尿病になってからの期間が長くなると発症することもあります。網膜症を発症すると、「ものがかすんで見える」、「小さな虫のようなものが飛んで見える」などの症状が現れますが、かなり進行するまで症状に気づかないことが多いため、糖尿病の患者さんは自覚症状の有無を問わず、定期的に眼科で眼底検査を受けるようにしましょう。
糖尿病網膜症とは? について
https://acuvuevision.jp/memamori/eye-health/28
緑内障
緑内障とは、視神経に障害が起こり、視野がだんだん狭くなっていく病気です。はじめのうちは自覚症状はあまりないのですが、進行すると視界の一部がぼやけて、かすんでいると感じるようになります。緑内障は珍しい病気ではなく、日本における失明原因の第1位となっています。また障害が起こった視神経は元に戻らないため、緑内障を完治させることはできません。しかし、早期発見をして治療を開始すれば、進行を遅らせることはできます。初期症状がほとんどないことからも、早く見つけ早く治療を開始することが重要となります。
早急に眼科を受診すべき症状
目のかすみに加え、ものが二重に見える、目が痛い、激しい頭痛や吐き気、めまいがある場合は、「急性緑内障」や「くも膜下出血」といった重大な病気の可能性があります。急性緑内障は数日で(症状によっては一晩で)失明してしまう場合があります。また、くも膜下出血は命に関わるため、どちらも早期治療が大切です。これらの症状がみられたら、一刻も早く医療機関を受診してください。
目のかすみが気になったら、眼科を受診しましょう。眼科では、視力検査や基本的な眼科検査(細隙灯顕微鏡検査、眼圧検査など)を行い、原因を探します。
緑内障が疑われる場合には、視野を調べる視野検査、視神経を含めた目の奥側(眼底)を調べる眼底検査なども行います。
原因を特定できたら、その原因に応じた治療を行います。上でも解説したとおり、かすみ目の原因はさまざまですので、治し方も人によって異なります。
かすみ目の原因が「屈折・調節」にある場合は、メガネやコンタクトレンズを使って視力を適切に矯正する必要があります。見えづらさによる目の疲れを放っておくと、十分な休息をとっても目の疲れが治まらない「眼精疲労」になってしまう場合があります。屈折や調節は年齢と共に変化していくことがありますので、すでにメガネやコンタクトレンズを使用している人も、忘れずに眼科での定期検査を受けましょう。
かすみ目を自宅でケアする方法
目を酷使したことによるかすみ目は、自宅でケアすることができます。ただし、治療が必要な病気が隠れている場合もありますので、症状が改善しない場合は眼科を受診してください。
目を休ませる
こまめに休憩を取り、目を休ませましょう。パソコンを使って仕事をするときは、連続して1時間作業したら15分くらいの休憩を取ってください。遠くの景色をぼんやり眺めたりするのもおすすめです 3)。
目の周囲を温める
パソコンなどの画面を見ながら行う作業(VDT作業)の後にホットアイマスクを10分ほど目の上に乗せると、目のピント合わせ機能が回復すると報告されています 4)。夜寝る前に、蒸しタオルや市販のホットアイマスクなどを使って目を温めてみましょう。蒸しタオルは、濡らしたタオルを軽くしぼりレンジで温めると作ることができます。
目薬をさす
目のピント調節機能を改善させる成分が入った目薬を試してみるのも良いでしょう。ただし、市販の目薬を使用しても症状が改善しないときは、医療機関を受診しましょう。
十分な睡眠をとる 5)
しっかりと睡眠を取って目を休ませましょう。ストレスに強い体を作るためにも睡眠はとても重要です。個人差はありますが、必要な睡眠時間は1日6~8時間程度と言われています。就寝前には、ぬるめのお湯にゆっくりつかるなど、リラックスできる工夫をすると良いでしょう。また、寝る前3~4時間はカフェイン摂取を避けるなどして、睡眠の質を下げないことも大切です。
食事をしっかりととる 6)
睡眠だけでなく食事も大切です。バランスの取れた食事を心がけましょう。
<体に良い栄養素>
- ビタミンA:目の粘膜や機能を維持する働きがあり、疲れ目を予防してくれます。ビタミンAは、レバーやうなぎに多く含まれています。
- β-カロテン:体内でビタミンAに変換される栄養素です。にんじんやかぼちゃ、モロヘイヤなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
- ビタミンB群:なかでもビタミンB1とB12には、神経や細胞を修復し、機能を維持させる作用があります。ビタミンB1は、豚肉や玄米、豆類に、ビタミンB12は、シジミやアサリ、牛レバーなどに多く含まれています。
- ビタミンE:血行を良くする働きがあり、目の疲れを回復させてくれます。かぼちゃ、アーモンドなどに多く含まれています。
- アントシアニン:抗酸化作用があり、網膜の血管や細胞を保護してくれます。ブルーベリー、紫芋、ナスなどに多く含まれています。
- タウリン:目の栄養成分であり、目の疲れの回復に役立ちます。イカ、タコ、貝類などに含まれています。
かすみ目の予防方法
目の乾きによるかすみ目を予防するには、目の表面を乾燥させないことが大切です。特に、パソコンやスマートフォンの画面は、つい集中して見てしまうので、まばたきをするのを忘れてしまうことがあります。作業中は意識的にまばたきをして、目の表面をうるおしましょう。
また、パソコンを使っている方は、目の疲れからくるかすみ目を予防するために、以下の点に気をつけてみてください 7,8)。
- 画面に光が映り込まないように、ブラインドやカーテンをかける。
- 机上の明るさが300ルクス以上になるようにする。
- 無理のない姿勢で作業を行えるよう、机、椅子、ディスプレイ、キーボード、マウス等を適切に配置する。
- 作業に適した温度、湿度となるように調整する。
紫外線による目へのダメージがかすみ目の原因となる場合もあります。日差しの強い日は、UVカット効果のあるサングラスや日傘、つばの広い帽子などを使用し、目を紫外線から守りましょう。紫外線量が多くなる4月から9月だけでなく、冬でも雪の照り返しが強いスキー場などでは、目が紫外線によって大きなダメージを受けるので注意が必要です。
まとめ
疲れなどによる一時的なかすみ目は、休息をとれば回復するといわれていますが、中には重大な病気が潜んでいることがあります。単なるかすみ目と思って放置せず、気になる場合は早めに眼科医に相談するようにしましょう。
参考文献
- 中澤満他、標準眼科学第14版、医学書院、2018年
- 医療情報科学研究所編、病気がみえる vol.12 眼科、株式会社メディックメディア、2019年
- 令和元年7月12日付け基発0712第3号 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて 厚生労働省労働基準局編
- Takahashi Y. et al., Ophthalmology. 112(6):1113-8, 2005
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042749.html - 足立香代子監修、栄養学の基本がまるごとわかる辞典、株式会社西東社、2015年
- 厚生労働省 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01603.html - 公益社団法人 日本眼科医会 パソコンと目
https://www.gankaikai.or.jp/health/42/
参照サイト