
ブルーライトとは?

ブルーライトとは
ブルーライトとは、ヒトの目で見ることのできる可視光線(380~780nm)の中でも、波長の短い青色光(380~460nm)のことをいいます。紫外線とは別のものであり、ブルーライトよりも波長の短い紫外線は、人の目に見えません。一般的に光には、波長が短いほどエネルギーが高いという性質があるため、ブルーライトは可視光の中でも特に高いエネルギーを持っている光であるといえます。
紫外線は、UV-A、UV-B、UV-Cの3つに分けられます。このうち、太陽から地上に届くのはUV-AとUV-Bの2種類で、そのほとんどが角膜や結膜で吸収されます。水晶体よりも奥にある網膜まで届くのは、UV-Aのうち可視光線に近い波長の部分のみです。一方、ブルーライトは網膜まで到達します。
日常生活の中でブルーライトを発しているもの
LEDの普及に伴い、日常生活において太陽光以外から発せられるブルーライトを浴びる機会が増加しています。ブルーライトを発する機器には、LED照明のほか、液晶テレビやPC、スマートフォン(スマホ)のディスプレイなどがあります。ブルーライトの放出量は機器によって様々ですが、LEDが普及する前と比べて、私たちは長時間、至近距離でブルーライトを浴びる生活を送るようになりました。
ブルーライトが人間に与える影響について
脳への影響
人類は何万年も前から、太陽の動きに合わせて生活してきました。人間の生活リズムは、太陽が作り出す約24時間の光周期によって作られており、このように作られた生物学的なリズムのことをサーカディアンリズムといいます。サーカディアンリズムは、脳波、ホルモン分泌、細胞の再生など、多くの生命活動においてみられる現象で、このリズムの維持にブルーライトが重要な役割を担っています。例えば、LED照明やスマホなどが発するブルーライトには覚醒作用(眠くならない作用)があるため、就寝前にブルーライトが目に入らないようにすることで、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が増加し、眠気が増すことが明らかになっています1)。逆に、ブルーライトを夜遅くまで浴びると、睡眠障害になる可能性が指摘されています
目への影響
動物や細胞を使った実験では、網膜が過剰なブルーライトにさらされると、細胞内で酸化ストレスが生じ、傷害をうけることが報告されています2)3)。しかし、ヒトの眼球においても同様の傷害が発生するかどうかは、まだわかっていません。また、PCやスマホなどのデジタルディスプレイから発せられるブルーライトの量は、晴天または曇りの日に私たちが窓越しに浴びる太陽光と同程度であり、網膜に傷害を生じるレベルではないことが示されています1)。
太陽光は、小児の発育に好影響を与える可能性が示唆されています。小児では特に、十分な太陽光を浴びないと、近視が進行するリスクが高まる可能性が報告されています4)。そのため、日本眼科学会は、目の発達時期にある子供がブルーライトカット眼鏡を装用することは、ブルーライトを浴びること自体よりも有害である可能性が否定できないとして、子供にブルーライトカット眼鏡を装用させるのは慎重に考えるべきとの意見を発表しています5)。
このように、日常生活で使用するデジタル機器から発せられるブルーライトが網膜を傷害する可能性は低いものの、現段階では実際にどれだけ影響があるか分かっていません。また、太陽光を浴びることによる近視抑制効果やブルーライトカット眼鏡装用による影響についてもさらなる研究が待たれます。ブルーライトと同様、太陽光に含まれる紫外線の場合、長期間にわたって紫外線を浴び続けると白内障を発症するリスクが高まることが知られている一方、短時間の日光浴は骨の成長と維持に重要なビタミンDの生成に必要であることも言われており、功罪両面を持っています。
したがって、ブルーライトの影響について、現時点では神経質になる必要はないものの、日常生活において過剰に浴びないように心がけることが大切です。
ブルーライトの影響を
軽減させる方法とは…
ブルーライトは、日常的に私たちの目に入ってくる光の1つであるため、目に対するブルーライトの影響を完全にカットすることは現実的ではありません。
しかし、ブルーライトを発するデジタルディスプレイの明るさを調節することは、まぶしさやちらつきによる目の疲労を軽減するための対策として有効です。また、上述したように、ブルーライトには覚醒作用があるため、就寝前のPCやスマホの使用を控えることは睡眠の質を向上させるうえでとても重要です。
最近では、ゲームや動画視聴により、デジタルディスプレイを長時間見続けることが日常化しています。デジタル機器の長時間使用を控えることは、ブルーライトによる睡眠障害や目の疲労といった影響を軽減することにもなります。また、ブルーライトは、発生源(ディスプレイ画面)から離れるほど浴びる量が少なくなることや1)、目の疲れを軽減するという点から、PCの場合は40~50cm、スマホは30cm以上6)離して見るようにしましょう。
ブルーライトをカットする視力矯正方法
最近行われたある研究では、ブルーライトカット眼鏡に眼精疲労を防ぐ効果は認められませんでした7)。しかし、普段PCやスマホを使用しているときにディスプレイのまぶしさが気になる方や、夜間の運転中に対向車のLEDライトや街灯をまぶしく感じる方は、ブルーライトカット機能付きの眼鏡やコンタクトレンズを検討してみてもよいかもしれません。ただし、子供のブルーライトカット眼鏡については前述のとおり注意が必要です。
ブルーライトカットレンズには、着色タイプとクリアタイプがあり、ブルーライトカット率は着色タイプの方が高いです。目の乾きが気になる、または既にドライアイを発症している方は、コンタクトレンズよりも眼鏡の方が良いでしょう。遠視、近視、乱視などの屈折異常や老眼などの調節異常がある場合には、ブルーライトカット眼鏡やコンタクトレンズを採用した上で、運転時などに遠くがハッキリ見える度数のものと、近くにあるPCやスマホ画面上の文字が見やすい度数のものを使い分けることで、無理なピント合わせからくる目の疲れや、ブルーライトによるまぶしさや目の疲れを軽減することができます。
まとめ
最近は、生活のあらゆる場面で、ブルーライトを発するデジタル機器が使われるようになりました。ブルーライトが、まぶしさやちらつきといった眼の不快感を生じたり、睡眠障害につながる可能性があることを理解した上で、PCやスマホを上手に利用していくことが大切です。
参考文献
1) 綾木雅彦 他.住総研研究論文集 42:85-95, 2016
2) Ooe E et al. Mol Vis 23:52-59, 2017
3) Narimatsu T et al. Clin Exp Ophthalmol. 42:555-563,2014
4) Eppenberger LS et al. Clin Ophthalmol 14:1875-1890, 2020
5) 日本眼科学会 他.小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見、2021年
6) 不二門尚 第13回日本眼科医会記者懇談会、2019年
7) Singh S et al. Am J Ophthalmol, doi: 10.1016/j.ajo.2021.02.010, 2021
参照サイト
公益社団法人 日本眼科医会(https://www.gankaikai.or.jp/)
日本白内障学会(https://www.jscr.net)
公益社団法人 日本皮膚科学会(https://www.dermatol.or.jp/)


