色覚検査|種類や方法、セルフチェックについて
色覚検査とはどんなもの?
色覚検査とは、色覚異常の有無やタイプ、程度を調べる検査のことです。大きく分けると、次の3種類があります。
- 色覚異常のスクリーニング検査(石原式色覚検査表、標準色覚検査法)
- 色覚異常の程度を判定する検査(パネルD-15、ランタン・テスト)
- 色覚異常の確定診断およびタイプを決定するための検査(アノマロスコープ)
色覚異常とは、特定の色を見分けることが難しい状態のことです。私たちの目の中には錐体(すいたい)と呼ばれる細胞が3種類あり、これらの細胞のはたらきによって色覚がもたらされています。何らかの原因で錐体のはたらきが低下したり、機能しなくなったりすると、色の区別が難しくなり、色覚異常と呼ばれる状態になります。
色覚異常は、先天色覚異常と後天色覚異常の2つに大きく分けることができます。
- 先天色覚異常:遺伝的な原因により3種類の錐体のうちいずれかが生まれつき無い、あるいは十分機能しないために起きる色覚異常
- 後天色覚異常:網膜や視神経の病気、緑内障の症状の1つとして両目または片目に現れる色覚異常
かつては、低下した錐体機能の程度によって「色弱」や「色盲」という言葉が使われていましたが、現在はこれらの言葉を使わず、「色覚異常」が一般的に用いられています。しかし、色覚異常も血液型のように人が持つ特性の一つと考えて良いのではないかという意見もあり、日本遺伝学会は、2017年9月から「色覚異常」ではなく「色覚多様性」という呼び方を提唱しています。実際に日本では、先天色覚異常が男性の約5%、女性の約0.2%にみられるため、小学校のクラス40人の中に1人か2人はいる計算になります。
色覚異常とは? についてはこちら
https://acuvuevision.jp/memamori/article/23
色覚検査のやり方と種類
色覚検査の中で最も一般的に行われているのは、色覚検査表を用いたスクリーニング検査です。このスクリーニング検査で色覚に異常があると疑われた場合は、パネルD-15やランタン・テスト、アノマロスコープを用いて色覚異常の程度やタイプを調べます。
色覚検査表を用いた検査(石原式色覚検査表、標準色覚検査表)
この検査では、色覚異常の有無と大まかな分類を行うことができます。最も普及している検査法で、ほとんどの眼科で受けることができます。
石原式色覚検査表:モザイク状に並んだ複数の色の中から、書かれている数字や記号を読み取れるか調べる検査です。
(石原式色覚検査表)
*この写真は実際の検査表とは色調が異なるため、検査には使用できません。
標準色覚検査表:石原式と似たモザイク状の検査表ですが、石原式よりも特定の色覚異常のタイプの分類に優れています(ただし、確定診断には後述のアノマロスコープによる検査が必要です)。先天色覚異常を調べる「第1部」、後天色覚異常を調べる「第2部」、第1部と第2部から何枚かのカードをピックアップした検診用の「第3部」があります。
(標準色覚検査表)
*この写真は実際の検査表とは色調が異なるため、検査には使用できません。
色相配列検査(パネルD-15)
15色のカラーキャップを、基準となる色に近いと思うものから順に並べていく検査です。色覚異常の程度を把握するのに適しています。この検査をパスした場合は「中等度以下の異常」、パスしなかった場合は「強度異常」と判定されます。ただし、程度の軽いものは判定できない場合もあります。
ランタン・テスト
鉄道の信号灯のような機械から発する小さい光を見せ、その色の名前を答えていく検査方法です。この検査は、パネルD-15で中等度以下と判定された方を対象に行い、色覚異常が中等度か軽度かを判別します。鉄道従事者が信号灯などを視認できるか調べるために使われる検査なので、鉄道従事者になりたい人以外が受けることはほとんどありません。
アノマロスコープ
赤緑色覚異常(赤と緑の判別が難しい色覚異常)の確定診断ができる検査機器です。接眼部からこの機械の中を覗き込むと上下に二分された円があり、円の上半分には緑色と赤色を混合した光が、下半分には黄色の光が見えるようになっています。
この検査では、緑と赤の光を一定の割合で混ぜると黄色に見えることを利用します。つまり、円の上半分に見える光(緑と赤)の混合比を次第に変化させていき、下半分とちょうど同じ色と明るさ(黄色)になったところを被験者に答えてもらいます。そのときの緑と赤の混合比を調べることで、色覚異常のタイプを調べることができるのです。また、この検査では、色覚異常の程度についてもある程度判定できます。ただし、この検査を実施できる施設は限られています。
色覚異常をセルフチェックする方法はある?
最近は、スマートフォンやパソコン上で色覚異常をセルフチェックできるウェブサイトやアプリケーションも登場しています。しかし、このようなセルフチェックは、眼科で行われている色覚検査とは条件が異なりますので、結果に関してはあくまでも参考程度と考えてください。スマートフォンやパソコンのディスプレイに表示される色は、実際に検査で使用する色とは異なる場合もあり、正確に検査を行えるとは限らないためです。
ご自身の色覚について相談したいことがある場合は、必ず眼科を受診しましょう。
色覚異常といわれたらどうする? 仕事や運転免許は?
普段の生活について
色覚異常があっても、自身が色覚異常であることを知ってさえいれば、基本的に問題なく日常生活を送ることができます。ただし、雨が降っている時や夕暮れ時、疲れている時などは色の区別が難しくなることもありますので、いつも以上に注意が必要です。
進学や就職について
色覚異常のある人が特定の学校に入学・進学できない時代もありましたが、現在はこのような制限がほとんどなくなっています。しかし現時点では、色覚異常がある人は鉄道運転手、航空管制官、旅客機のパイロットにはなれません。また、微妙な色の識別を要する職業には就くことが難しいかもしれません。色覚異常があることが分かったら、将来就きたい職業について事前に調べておくことが大切です。
運転免許について
自動車運転免許は、信号の色(赤・黄・青)を見分けられれば取ることができます。信号機の緑色はやや青寄りに設定されているため、赤緑色覚異常がある人でも判別は可能です。また、最近は、色覚異常の人が赤と黄色を判別できるように、特殊なLEDを使用して赤信号に×印を表示させることのできる信号機も開発されています。
これからの社会に必要な色覚への理解とは
かつては、小学4年生を対象に学校で色覚検査が行われていましたが、「色覚検査をすることは差別につながる」などの声が挙がり、2003年より学校では色覚検査が行われなくなりました。しかしその後、自身の色覚異常を知らずに成長すると、進学・就職などで不利益を受ける可能性があることが分かり、2016年より希望者は学校で色覚検査を受けられるようになりました。
子供のうちに色覚異常に気づくことができれば、色覚による誤りをしないよう対策を講じたり、自分に適した職業について十分に考えたりすることができるため、早めに色覚検査を受けることが大切です。特に、色覚異常があると就けない職業(鉄道運転手、航空管制官、旅客機のパイロット)を目指している人は、早めに色覚異常がないか確認しておきましょう。
学校現場でも色覚異常に対する理解が進んできています。色の見え方が違う生徒がいることを学校の先生が意識し、色の名前で答えさせる問題は出さない、緑の黒板に赤のチョークを使わないなど、配慮するようになってきました。
私たちの社会は、どうしても多数派の人が暮らしやすいものになってしまう傾向があります。色に関しても同様で、例えば色覚が正常な人には見やすい鉄道路線図の色分けも、色覚異常の人には見分けにくいことがあります。誰にでも識別しやすい色の組み合わせを活用して「色のバリア」をなくし、なるべく多くの人が心地よいと感じる色環境をデザインすることが望まれています。
(左)正常色覚の人が見たときの路線図。(右)同じ路線図を色覚異常の人が見ると、赤色と緑色が見分けづらく、紫色は青色に見えます。
カラーユニバーサルデザインとは?1)
では、誰もが見やすいようにデザインをするには、どのような色使いをすればよいのでしょうか?
近年、情報を伝える側の人は、色覚異常の人だけでなく色覚機能が弱くなる高齢者にも配慮した「カラーユニバーサルデザイン」を使用することが推奨されています。
カラーユニバーサルデザインでは、使う色の数をできるだけ少なくし、色文字を使う場合は、以下のようにして見やすくすることが求められています。
- 背景色と図色との間に明度差をつける
- 書体、大きさ、囲み枠などで変化をつける
- 色の情報を伝える時には、該当部分に色名を添える
2003年7月から、テレビのリモコンには青、赤、緑、黄の色名が表示されるようになりました。
自分が情報を発信する立場になった時には、カラーユニバーサルデザインについて理解し、どんな色覚の人にも見やすいデザインにすることが大切です。
まとめ
色覚異常は決して珍しいものではありません。実際、日本には色覚異常の人が500万人以上いると言われています。色覚異常であることを知らずに大人になると、進学や就職の際に、希望する職業に就けなかったり、専門教育が受けられなかったりすることがあるかもしれません。そのようなことがないよう、早めに色覚検査を受け、自分の色覚の特徴を把握しておくことが大切です。色覚異常が疑われる場合や自分が色覚異常であるか知りたい場合は、インターネット上の情報を元に自己判断をするのではなく、眼科を受診してきちんと検査を受けましょう。
●参考文献
- 伊藤啓 情報管理 55(5), 307-317, 2012
●参照サイト
- 公益社団法人 日本眼科医会 色覚異常といわれたら
https://www.gankaikai.or.jp/health/50/index.html - 公益社団法人 日本眼科医会 色覚関連情報
https://www.gankaikai.or.jp/colorvision/ - 公益財団法人 日本眼科学会 先天色覚異常
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=33