流行性角結膜炎(はやり目)とは?原因や症状・治療法について解説

流行性角結膜炎(はやり目)とは?原因や症状・治療法について解説

はやり目とは?原因や症状について

流行性角結膜炎(はやり目)とは?原因や症状・治療法について解説

俗に「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎。人から人へとうつる病気であるため、感染対策が重要です。この記事では、流行性角結膜炎(はやり目)の原因や症状、治療法のほか、感染を広げないための対策についても解説します。
作成日: 2022/12/08
更新日: 2024/07/30

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目次

 

流行性角結膜炎とは?

流行性角結膜炎とは、アデノウイルスと呼ばれるウイルスの感染によって引き起こされるウイルス性結膜疾患(ウイルスによる結膜炎の総称)の一種です。アデノウイルスには数多くの種類がありますが、主にアデノウイルス8、19、37、53、54、56型が、流行性角結膜炎の原因となります1)~3)。このウイルスは感染力がきわめて強く、時に地域や学校で大きな流行を引き起こすことから、俗に「はやり目」2)~6)と呼ばれています。

流行性角結膜炎は、感染者に直接触れたり、感染者が直接触ったものに触れたりすることで伝染する接触感染のため、人から人や、感染者が使ったタオルなどの物を介して広がります。アデノウイルスは暖かい環境を好むため、流行性角結膜炎は夏に多く発生する傾向がありますが、1年を通してみられます。

主なウイルス性結膜炎には、アデノウイルスによる「流行性角結膜炎(はやり目)」や「咽頭結膜熱(プール熱)」、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる「急性出血性結膜炎」などがあります。

ウイルス性結膜炎について
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流行性角結膜炎の主な症状

感染すると約1~2週間の潜伏期の後、「結膜(しろ目)の充血」、「まぶたの腫れ」、「大量の目やに」、「流涙(涙がたくさんこぼれる)」などの症状が現れます。はじめは片方の目にこれらの症状が現れて、4~5日後にはもう片方の目にも同じ症状が現れるケースが多いようです。細菌など他の原因による結膜炎に比べて症状は重いことが多く、耳の前にあるリンパ節(耳前リンパ節)が腫れ、触ると痛みを伴うこともあります。また、発症から1〜2週間後に、角膜(くろ目)に小さな濁り(多発性角膜上皮下浸潤)が現れ、まぶしさや目のかすみを引き起こす場合がありますが、多くはやがて自然に消失します。

イメージ図

流行性角結膜炎の治療法

原因であるアデノウイルスに有効な薬剤は、今のところありません。感染したウイルスに対する免疫ができて、ウイルスが排除されるのを待つしかありません。対症療法的に炎症を抑える抗炎症薬や、細菌の混合感染を予防するための抗菌薬の点眼を行いながら自然治癒を待ちます。また、結膜炎の症状が重い場合には、ステロイドの点眼を併用することもあります。通常は、2~3週間で自然治癒するため、十分な栄養と休養をとり、免疫力を落とさないようにすることが大切です。

なお、症状が治まってきた頃、角膜の表面に現れる小さな点状の濁りはしばらく消えない場合が多く、治療をやめてしまうと角膜がさらに濁り、視力が落ちてしまうことがあります。

流行性角結膜炎の予防法

主な感染経路は接触感染ですので、結膜炎の人の目やにや涙に存在するウイルスが手指などを介し、ドアノブや電車のつり革などに付着し、そこに触れた人が自分の目をさわるだけでも感染してしまいます。そのため、むやみに目を触らない、外出後の手洗いを徹底するといったことが、日常的にできる予防法として非常に重要です。

もし感染した場合には、周囲の人にうつさないよう、家庭内では感染者とタオルを共有しない、ドアノブなど皆で触るものを消毒する、感染者の入浴は最後にするなど、以下のことを心がけましょう。また、コンタクトレンズを使用している人は、症状が出ている間は装用を控えてください。

  • 石鹸と流水で手をよく洗う
  • タオルやハンカチ、枕などの寝具を家族と共有しない
  • 感染した方の目を触った後に、もう片方の目を触らない
  • 目やにや涙が出る場合は、ティシュペーパーなどでふき取りすぐに捨てる。
  • ドアノブなどよく触れる場所をアルコール消毒する
  • お風呂は最後に入るかシャワーにする

流行性角結膜炎の場合、発症から2週間ほどは他の人に感染させてしまう可能性があるとされています。発症から日が浅いほど感染させてしまう危険性が高いので、この時期は自宅で療養してください。なお、流行性角結膜炎は、学校保健安全法上の第三種学校感染症の1つで、児童が発症した場合、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」は出席停止と定められています7)。眼科医に治ったことを確認してもらってから登校してください。

大人の場合にはそのような法的根拠はありませんが、人と接触する機会の多い職業(学校、医療施設、接客業など)に従事している人には、職場の内規で出勤停止が義務づけられていたり、伝染を防ぐため、医師から出勤停止を指示される場合があります3)

まとめ

流行性角結膜炎は、ウイルス性結膜炎の中でも比較的症状が重く、感染力が非常に強い病気です。そのため、もしかかってしまったら、ほかの人にうつさないための配慮が必要になります。感染予防に関する正しい知識を身につけ、適切な対策をとりましょう。

<参考資料>

  1. NID 国立感染症研究所:流行性角結膜炎とは
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/528-ekc.html
  2. 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019
  3. KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト:流行性角結膜炎
    https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000208.html
  4. 公益社団法人 日本眼科医会:ウイルス性結膜炎
    https://www.gankaikai.or.jp/health/27/index.html
  5. MSDマニュアル:プロフェッショナル版 ウイルス性結膜炎 / 家庭版 はやり目
    https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
  6. 公益財団法人 日本眼科学会:病名から調べる ウイルス性結膜炎
    https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=14
  7. 公益財団法人 日本学校保健会 学校保健ポータルサイト:学校感染症による出席停止の基準
    https://www.gakkohoken.jp/special/archives/122