目のかゆみの原因は?
目を守る仕組みとは?1)
まずは異物や病原体の侵入から目がどのように守られているのか簡単に知っておきましょう。
もっとも外側で目を守っているのが、まぶたとまつ毛です。まぶたやまつ毛には、異物や病原体の侵入から目を守るというはたらきがあります。さらにまぶたには、目の乾燥を防ぐという役割もあります。まぶたの縁のところにあるマイボーム腺から油分(脂質)を分泌して、この油がまばたきで涙の表面にひろがって涙が蒸発するのを防ぐとともに、まぶたは、涙と一緒に異物や病原体を洗い流すはたらきも担っています。
また、結膜(白目表面からまぶたの裏側までをおおっている粘膜)も、目の防御において重要な役割を果たしています。特に重要なのは、異物や病原体を排除するための免疫機能を持っている点です。しかし、免疫機能があることで、結膜は異物に対する炎症を起こすことも多く、この炎症は目のかゆみの原因となります。
どうして目がかゆくなるの? 原因を解説
目のかゆみの大部分は、結膜の炎症(結膜炎)が原因です。なかでも多くの人が苦しんでいるのが、アレルギーが原因の結膜炎(アレルギー性結膜炎)です。アレルギーを引き起こす物質は人によってさまざまで、毎年同じ時期に症状が現れる場合(代表的なものではスギ花粉が原因のいわゆる花粉症)と、ほぼ1年を通じて症状が出る(原因はダニやカビ、ハウスダスト、ペットの毛など)場合があります。アレルギー性結膜炎においてかゆみの一因となっているのが、ヒスタミンという物質です。ヒスタミンが、結膜の近くにある神経や血管を刺激することで、炎症やかゆみが起こるのです。また、アレルギー性結膜炎では、目のかゆみのほかにも、なみだ目、目のゴロゴロ感、結膜浮腫(白目が腫れた状態)、充血などの症状がみられることがあります。
アレルギー性結膜疾患の中には、「春季カタル」と呼ばれる重症のものもあります。原因はハウスダストやダニであることが多いとされており、激しいかゆみがあることに加えて、角膜(黒目)の障害、視力低下、目の痛み、まぶしさなどの症状が現れます。10代の男性に多く、成長にともない、しだいに治っていく傾向にあります。
アレルギー以外にも、細菌やウイルスなどの感染(感染性結膜炎)や、涙の減少(ドライアイ、乾燥性角結膜炎)、ものもらいによって結膜炎が起き、目のかゆみが起こることがあります。また、まぶたの縁に炎症が起き、ただれた状態になる眼瞼縁炎(がんけんえんえん)も、目のかゆみの原因となります。コンタクトレンズの装用が原因で、目の周囲に炎症を起こしてしまうことがありますので注意が必要です。
かゆみが長く続いたり、かゆみ以外の症状があったりするときは、我慢せずに眼科を受診してください。
目がかゆくなった時の対処法とは?
目がかゆいときには、反射的にかいてしまうことがあるかもしれません。しかし、目をかいてしまうと、その刺激によってアレルギーや炎症に関わるヒスタミンがさらに出てきてしまい、かゆみが増すため、かくことはできるだけ避けてください。
目のかゆみの原因がアレルギー性結膜炎の場合は、ある程度自分でケアすることができます。具体的には、人工涙液(目薬)で目を洗ったり、ゴーグル型の眼鏡を使用して花粉などが目に入るのを防いだりすることで、症状を和らげることができます。コンタクトレンズを装用している人は、コンタクトレンズの使用を一時的に中止して、まずはアレルギー性結膜炎の治療を優先させてください。また、ハウスダストやダニなどが原因の場合には、寝具などを清潔に保ちましょう。
すぐに眼科に行けないときには、まず抗アレルギー成分の入った目薬を使用することが勧められています。抗アレルギー目薬は色々なものが市販されていますが、基本的には、病院で処方される目薬よりも市販の目薬の方が効き目がゆるやかである場合が多いです。市販の目薬を2~3日使ってもかゆみが治まらない場合は、眼科を受診しましょう。
ここに挙げたような対処法を試してもかゆみが治まらない場合、または、他の症状が見られるなどの場合には、アレルギー以外の原因が隠れている可能性もあります。眼科を受診して正しい診断と治療を受けましょう。
目がかゆくならないための予防法は?
アレルギー性結膜炎による目のかゆみを予防するには、アレルギーを起こす原因物質をできるだけ避けることが大切です。花粉症の方であれば、花粉シーズンにはメガネやマスクを使用して、花粉との接触を減らしましょう。また、花粉症に関しては、抗アレルギー成分の入った目薬を使って初期療法を行うこともできます。初期療法とは、ひどい症状が出ていなくても、スギ花粉が飛び始める頃になったら目薬を使用しはじめる治療法のことで、症状を軽くしたり、症状が出るのを遅らせたりする効果があるとされています。少ない花粉でも症状が出てしまう人や、花粉が多く飛ぶことが予測される年などに勧められている方法です2)。
ドライアイによる目のかゆみを予防するには、長時間の読書やパソコン業務、スマホの使用などで目を酷使しないように注意してください。乾燥した環境や、常に風のある場所、さらには塵や煙をなるべく避けるようにしましょう。ドライアイがあって粘膜が傷んでいると、抗原(アレルギーをおこす原因物質)にさらされたときのアレルギー反応が強くなってしまうので、ドライアイのケアがドライアイによるかゆみだけではなく、アレルギー性結膜炎の対策にもなります。
症状が軽い場合には、市販の目薬でも症状を改善することができますが、眼科では、涙の不足成分を補う目薬、目の炎症を抑える目薬の処方、涙点に栓をして涙をためる治療などを行います。
コンタクトレンズの装用に伴う目の炎症やかゆみの発生を防ぐには、レンズを衛生的に管理することが大切です。レンズの洗浄方法や使用方法を正しく守り、長時間の装用は避けてください。また、レンズが目にしっかりとフィットしているか、定期的に見直しましょう。
目のかゆみに効く目薬の選び方とは?3)
市販の目薬を選ぶ際には、自分の症状に合った成分が含まれているか確認する必要があります。例えば、花粉やハウスダストなどによるアレルギーが原因で目のかゆみが起きている場合は、抗ヒスタミン成分が含まれている目薬や、ケミカルメディエーター遊離抑制薬(かゆみや炎症を引き起こす物質が細胞から放出されるのを抑える薬)を選びましょう。一方、結膜炎などの炎症を抑えたい場合には、抗炎症成分が含まれている目薬を選んでください。
なお、目薬の中には「血管収縮剤」、「メントール、カンフル」「防腐剤」といわれる成分が含まれているものがありますが、これらの成分は継続的に使用する際に注意が必要な場合がありますので、市販薬を購入する際には、薬剤師に相談してみるとよいでしょう。
市販の目薬で症状が改善しないときは、原因に合った目薬を選択できていないかもしれません。かゆみなどの症状が続く場合は、眼科を受診して正確な診断を受け、適切な薬を処方してもらいましょう。
まとめ
かゆみには、痛みとは違う辛さがあるものです。一口に「目のかゆみ」といっても、その程度や原因はさまざまです。簡単なセルフケアで症状が軽くなったり、治ったりする場合もありますが、深刻な病気が隠れていることもあります。目のかゆみが長く続くときや、ほかにも気になる症状があるときは、眼科を受診してください。
参考サイト
- 公益財団法人 日本眼科学会
https://www.nichigan.or.jp/ - 一般社団法人 日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/ - MSD マニュアル プロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/professional - 公益社団法人 日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/
参考文献
- 北野周作 日本視能訓練士協会誌19, 17-18,1991
- 高村悦子 アレルギー 63, 1103-1109, 2014
- 公益社団法人 日本眼科医会監修 点眼剤の適正使用ハンドブックQ&A