角膜びらんとは?症状・原因・治療方法をご紹介
角膜びらんとは
角膜びらんとは、目の表面の「角膜」の一部分が剥がれてしまっている状態のことです。角膜は、中央の厚みが0.5 mm程度の薄い膜なのですが、さらに細かく見ると、角膜表面から順に、上皮層、実質層、内皮層の3つに分けられます。このうち、上皮全層が障害を受け、欠損が基底膜(ボーマン膜)まで達している状態が「角膜びらん」です。
角膜びらんと角膜潰瘍の違い
角膜びらんと似たような症状が現れる病気に「角膜潰瘍」というものがあります。これら2つは、「角膜の異常がどの程度の深さにまで達しているか」によって区別されています。
角膜びらんは、前述の通り、角膜の「上皮」が剥がれてしまった状態のことです。一方、角膜潰瘍は、角膜の異常が上皮だけでなく、「実質」にまで達している状態を指します。つまり、角膜潰瘍のほうが、角膜びらんよりも重症であるといえます。
角膜びらんの症状
角膜びらんが生じると、目の痛みや充血、ゴロゴロ感、まぶしさを感じる、涙が止まらないなどの症状が見られます。一度治ったように見えて再発するケースもあります。
角膜びらんの原因
角膜びらんは、原因によって次の3つに大きく分けることができます。眼科では、適切な治療を行うため、まず原因を明らかにします。
- 外傷性:コンタクトレンズの不適切な使用や、目に入った異物などにより、角膜上皮が傷つくことで起こる角膜びらんです。特に、コンタクトレンズ装用者では、コンタクトレンズをつけたまま眠ったり、レンズケアを適切に行わなかったりすると、角膜に小さい傷ができ、角膜びらんにまで発展してしまうことがあります。
- 感染性:ウイルスや細菌の感染によって、角膜上皮がダメージを受けることで生じる角膜びらんです。
- その他の原因によるもの:ドライアイや神経麻痺、糖尿病、角膜ジストロフィ(遺伝性の病気)*など、さまざまな病気が原因で角膜びらんが生じることがあります。
角膜びらんの検査・治療方法
眼科での検査方法
眼科では細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)という機器を用いて、角膜の状態をくわしく観察します。細隙灯とは、目に帯状の細い光(スリット光)を当てて、主に目の表層部分を詳しく観察する機器で、この検査により、びらんの程度や状態がわかります。またこの検査は、角膜の傷を観察しやすくするために、フルオレセインという蛍光試薬を点眼してから行う場合もあります。
ウイルスや細菌などの感染が疑われた場合には、びらんの部分に病原体がいないか検査することがあります。
また、角膜びらんは、糖尿病や角膜ジストロフィといった様々な病気が原因で起こる場合もあるため、そのような病気を調べるために血液検査を行うこともあります。
角膜びらんの治療方法
角膜びらんは、治るまでの間は、特に感染に気をつける必要があります。また、目が乾燥しないように注意します。原因に応じて、次のような治療を行います。
- 目の表面に異物がある場合:目を洗浄することがあります。
- 病原体の感染が原因の場合:病原体に効果を示す点眼薬や眼軟膏、内服薬などで治療します。
- その他の病気が原因の場合:抗菌薬点眼薬を用い、原因に応じた治療薬を用います。治療用ソフトコンタクトレンズを使用することもあります。糖尿病などが原因で角膜びらんが生じている場合には、原因となっている病気のコントロールと角膜びらんに対する治療を行います。
角膜びらんは再発する可能性がある
角膜びらんは、基本的に一度治ってしまえばその後も問題ないことが多いのですが、なかにはいったん治った後に再発をくり返すようなケースもあります。この状態は、「再発性角膜上皮びらん」と呼ばれています。 再発性角膜上皮びらんの原因はよくわかっておらず、原因不明の場合も少なくありません。ただし、鋭い紙や爪などによってついた傷がきっかけとなり、角膜がはがれやすい状態になって起きたと考えられるケースもあるようです。
再発性角膜上皮びらんの症状として特徴的なのは、起床時に生じる激しい目の痛みや強い異物感です。寝ている間は涙の分泌量が減少するため、そのせいで角膜上皮が剥がれやすい状態になります。そして、起床時にまばたきをしたことがきっかけで上皮が剥がれてしまい、このような強い症状(発作)が生じると考えられています。
再発性角膜上皮びらんは、基本的に数か月~年単位の経過観察が必要です。症状を抑えるために、防腐剤の入っていない人工涙液を使用するほか、寝る前に眼軟膏を使用します。また、痛みを抑えるために、消炎内服薬が処方されることもあります。さらに、角膜の治癒を促すことができる角膜表層穿刺(かくまくひょうそうせんし、ASP:anterior stromal puncture)と呼ばれる手術や、レーザーを使った治療を行うこともあります。
角膜びらんの予防方法とは?
角膜びらんを予防するには、原因となる状況を避けることが大切です。
コンタクトレンズの不適切な使用による目のトラブルも角膜びらんの原因になります。決められた装用方法・ケア方法にしたがって、コンタクトレンズを正しく使用することが、角膜びらんの予防につながります。また、コンタクトレンズを購入する際には、目の状態や生活スタイルなどを考慮し、適切なレンズを処方してもらうことも大切です。
角膜びらんにつながることがある「ドライアイ」を予防することも大切です。スマホやパソコンを使用する際には、定期的に目を休ませ、意識的にまばたきをしましょう。また、エアコンは目を乾燥させてしまうことがあるため、湿度を適切に管理しながら使用しましょう。
角膜の異常は、自分で気づくことが難しい場合もあります。病気を早い段階で発見・治療するために、定期的に眼科で検査を受けましょう。
まとめ
角膜びらんは、角膜の最表面が傷つき剥げてしまった状態をさします。コンタクトレンズを使っていなくても起こることもありますが、コンタクトレンズをつけたまま眠ったり、付着物のついたコンタクトレンズを使い続けたりすると、角膜にキズをつけてしまう可能性があり、目のトラブルにつながることもあります。大切な目の健康を守るためにも、コンタクトレンズは正しく使用しましょう。
参考サイト
- 公益社団法人 日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/ - MSDマニュアル プロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ - 公益財団法人 日本眼科学会 感染性角膜炎診療ガイドライン
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/kansen2.pdf
参考文献
*相馬剛至ほか あたらしい眼科 23(3), 333-337, 2006