近視の発症を予防し、
進行を防ぐための
各国の取り組み
1.いったん近視になると治らないことがほとんど
~子どもの時から予防に取り組もう
子どもの近視が急増する傾向は、日本だけでなく世界でも同様です。近視を発症したまま放置しておくと年齢が上がるにつれ近視は進行していきます。近視は一度発症すると治らないと言われており、いかに近視にならないようにするか、また近視の進行をなるべく遅らせるため、子どもの頃からの対策が重要です。近視になっても眼鏡やコンタクトレンズがあるから問題ないと考えるのは早計です。
特に、日本を含む東アジア諸国での近視増加傾向は著しい状況で、一部の地域では90%を超えるとも報告されています*1。近視を放置することにより、世界の医療制度において年間2,020億ドル(約22兆3,000万円)もの巨額の負担となることも推定されています*2、この費用負担は今後数十年のうちに近視の罹患率と重症度が高まるのにともなって急激に増加すると予想されています。将来的な眼疾患リスクの低減や医療費の削減等の点からも、近視進行に対する対策が急務なのです。
近視という病気は、環境的および遺伝的要因により眼軸長が伸長することによるといわれています*3。しかし、現在、世界各国当局が承認している近視の進行を抑制するための治療法はごくわずかなのが現状です*4。
こうした現状の中、注目を集めているのが「近くを長時間見すぎないようにすること」と「太陽光を浴びること」です。ここでは特に後者に注目して取り組みを進めている各国の例をみてみましょう。
2.太陽光を浴びることで近視の進行が抑制される!
近年の研究において、屋外での活動が子どもの近視の発症抑制、進行の遅延につながるという研究結果*5,6,7,8,9が、多数報告されています。日本と同様、若者の近視増加が問題となっている国では、屋外活動を近視予防のために取り入れ、近視の進行抑制に実績を上げています。
台湾
体育の授業を改革!週に2時間半以上の
屋外で運動するよう法律を制定
台湾では、すでに1980年代から、生徒の机の高さや教室の照明を調整したり、目を酷使する作業の合間に休憩時間を設けるなど、さまざまな近視対策が実施されていました。より効果の高い取り組みを検討していた台湾政府は、屋外活動と近視予防の関係性を示す研究結果*5,6,7に基づいて、教育省、健康省が主導して、2010年、1日2時間以上の屋外での活動の導入を開始しました。この屋外活動の導入を進めてから近視の発症率が大きく減少したのです*10。
台湾南部の学校を対象にした2013年の調査でも、学校での屋外活動の導入によって、近視の新たな発症はなんと半分に抑えることに成功。進行も大幅に遅くなる*8という結果が示されました。こうした実証結果をもとに、2013年、台湾政府は、体育の授業に関する法律を改正し、週に2時間半以上の屋外運動の実施を法制化するに至ったのです。
シンガポール
国を挙げて子どもの外あそび推進と
デジタルデバイス使用制限プログラムを展開
シンガポールは、近視予防にあたり勉強や電子機器の使用時間を制限することに主眼が置かれていましたが、それに代えて、外あそび推進、デバイス使用の削減を推奨する啓発活動、学校での定期的な視力検査を連動させる取り組みを「国家近視予防プログラム」を2001年から国を挙げて実施しています。その結果、小学生の近視の割合は、2004年の37.7%から2015年31.6%に減少し、成果を上げています*11。
中国
国を挙げて近視削減目標を設定、
未就学児や小中学校での屋外時間の確保を要請
中国政府は、2018年、政府は各自治体の近視削減目標を定めた国家計画を策定しました*12。2030年には高校生までの近視発症割合を70%以下にすること、1日1〜2時間を目安に屋外での時間を確保することなどがもりこまれています*12。
北京市では、医療機関と学校が連携し、小中学校の子どもは1日1時間、幼稚園児は1日2時間以上の屋外時間を確保する、授業のうちデジタルデバイスを使うものは全体の30%以下とする、子どもの学校外でのデジタルデバイス使用時間は1日1時間以下に抑える、8歳以下の子どもはビデオゲームをしない、などを推進しています。
近視の進行を抑制する可能性が示されている「太陽の光を十分に浴びる」行動。1,000ルクス以上の光を1日約2時間浴びることが近視を抑制するといいます。直射日光でなくとも、木陰の明るさ程度でもよいとされています*5,6,7,8,9。明日から意識して取り入れてみませんか。
まとめ
近視かな?と思ったら…
近視を放置することのメリットはひとつもありません。「最近黒板が見づらい」「目の調子が悪い」などの症状を感じた場合、早急に眼科を受診しましょう。
*1 Rudnicka AR, et al. Br J Ophthalmol 2016; 100, 882-890
*2 Holden BA et al. Ophthalmology 2016; 123, 1036-1042
*3 Internal data on file
*4 Fredrick, D. R. (2002). Myopia. BMJ, 324(7347), 1195-1199. doi:10.1136/bmj.324.7347.1195
*5 Jones, L. et al. 2007, ‘Parental History of Myopia, Sports and Outdoor Activities, and Future Myopia,’ Invest Ophthalmol Vis Sci;48(8):3524-32
*6 Rose, K. et al. 2008, ‘Outdoor Activity Reduces the Prevalence of Myopia in Children,’ Ophthalmology;115(8):1279-85
*7 Rose, K. et al. 2008, ‘Myopia, Lifestyle, and Schooling in Students of Chinese Ethnicity in Singapore and Sydney,’ Arch Ophthalmol ;126(4):527-30.
*8 He, M et al. 2015, ‘Effect of Time Spent Outdoors at School on the Development of Myopia Among Children in China A Randomized Clinical Trial,’ JAMA 314(11):1142-1148
*9 Wu, P. et al. 2013, ‘Outdoor Activity during Class Recess Reduces Myopia Onset and Progression in School Children,’ Ophthalmology Vol 120, Issue 5
*10 Wu, P. et al. 2018, ‘Myopia prevention in Taiwan,’ Annals of eye science Vol3, No 2
*11 Karuppiah, V. et al. 2019, ‘School-based programme to address childhood myopia in Singapore,’ Singapore Med J
*12 Jan, C. et al. 2020, ‘Prevention of myopia, China,’ Bulletin of the World Health Organization;98:435-437
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