監修:梶田眼科 院長 医学博士 梶田 雅義 先生 目のトラブル(コンタクトレンズのトラブル)
痛い目にあわないためのコンタクトレンズの正しい使い方
コンタクトレンズ装用者は現在約1,800万人※。便利で、快適なコンタクトレンズですが、誤解やまちがえた使い方が原因でトラブルが増加しているのも事実です。特にソフトコンタクトレンズは目に障害が起こっても痛みなどの自覚症状が比較的少ないため、いつのまにか重い症状になっているケースが多いようです。コンタクトレンズは、あなたの目に直接つける高度管理医療機器です。適切な処方と装用、正しいレンズケアや定期検査など、使い方のルールをしっかり守らなければ、角膜を傷つけるなど、深刻な眼障害を引き起こしかねません。トラブルを予防して、いつも快適にコンタクトレンズを使いましょう。そして、少しでも違和感を感じたら、早めに眼科医の検査を受けてください。それ以上のトラブル悪化を避けるためにも。
では、トラブルにはどんなものがあるか、実際の症例を参考に作成したいくつかのケースをご紹介します。
※ 出典:コンタクトレンズ&ケア用品使用実態調査(2008年)/(株)インテージ
巨大乳頭結膜炎
“これくらいは大丈夫・・・” 使い方もケアもだんだん横着に。汚れたレンズが慣れっこになっていた。
(31 歳・女性・ OL)
ソフトコンタクトレンズ歴もかれこれ12年。もうすっかりベテラン、と思いこみ、日頃の扱いがついついぞんざいになっていました。レンズの洗浄・消毒もやったりやらなかったり、調子が悪くてもかまわず使ったり。定期検査もパスしがちでした。今使っているコンタクトレンズももう何年も同じ物を使い続けています。前から目が少しかゆいな、と思っていたら、だんだん目ヤニが増加、不安になって眼科医へ。先生が上まぶたをめくってみると、白いブツブツがいっぱい。巨大乳頭結膜炎と診断されました。
ウィルス性結膜炎
疲れた日、遅くなった日は、汚れた手で外して、そのままコンタクトレンズのケースに。
(26歳・男性・会社員)
レンズの手入れが面倒だからとメガネ派だった僕も、最近はケアが簡単になったと聞き、ソフトコンタクトレンズに。最初は教えられたとおりに扱っていたけれど、だんだん怠けぐせがついてきました。レンズを触る前に手を洗わないことも多くなっていました。ある日、目がゴロゴロするなぁと思って鏡を見たら目が真っ赤に。驚いて急いで眼科に行きました。ショックです。ウイルス性結膜炎だから、治るまでは他人にうつさないように注意する。もちろんコンタクトもしてはいけない、との診断。困りました。今持ってるメガネは昔作ったので、度数が合ってないし・・・
角膜浸潤
「一晩ぐらい」が間違いのもと。1日使い捨てタイプで眠っちゃいけないのは知っていたのに・・・。
(26歳・男性・会社員)
週末、友だちの家に泊まりに行きました。予備のレンズも忘れてきてしまったし、メガネも持っていかなかったので、その晩は深夜まで騒ぎ、そのままレンズを入れっぱなしで寝てしまいました。朝起きたら、左目が痛くて、真っ赤でした。涙も止まりません。眼科の先生によると「角膜浸潤」だそうです。レンズをしたまま眠ってしまったために、角膜が炎症を起こしたんだそうです。あの痛みはもう二度と経験したくありません。
点状表層角膜症
角膜表面についた細かい点状の傷。角膜表面の細胞が部分的に脱落している状態です。角膜は日々代謝しているので、軽度ならばコンタクトレンズをはずしておけば治癒しますが、傷が大きく、深くなると、角膜浸潤や角膜潰瘍へと進行します。原因はレンズの汚れ、ドライアイ、ケア用品に対する反応などさまざまです。ひどくなると異物感や充血などの症状がありますが、軽度のときには自覚症状がないので、眼科医による定期検査は欠かせません。
角膜血管新生
夜寝るときにソフトコンタクトレンズをはずさず連続装用している方に多く見られます。慢性的な角膜の酸素不足により、もともとは血管のない角膜に血管が生まれ、酸素不足を補おうとします。自覚症状がほとんどないので気がつかないうちに、進行します。定期検査などで眼科医のチェックを受けていれば、早期発見ができます。
角膜内皮障害
角膜内皮細胞は、角膜の最も内側の組織の細胞で、角膜の透明度を保つ働きがあります。コンタクトレンズの装用は、角膜内皮細胞に変化を与えます。
とくに、連続装用は内皮細胞の機能まで低下させる怖れもあり、自覚症状はなくとも、眼科医に定期的に検査してもらうことが重要です。
角膜潰瘍
角膜潰瘍は、角膜表面の細胞が深い部分まで欠損した状態で、角膜浸潤(前述)を伴います。細菌による感染を伴うものをとくに感染性角膜潰瘍といいます。感染性のものは、コンタクトレンズ障害の中で最も深刻なものの一つで、治療が遅れると失明にいたることもあります。角膜潰瘍の自覚症状としては、激しい眼の痛みと充血および眼脂(目やに)などがあり、治療としては、コンタクトレンズの装用をただちに中止した後、抗生物質の投与が必要です。角膜潰瘍は直った後も、混濁(濁り)が残るため、その部分の透明度を失います。不適切なレンズケアなどによるレンズの汚染は角膜潰瘍発症のリスクを高める他、連続装用は終日装用に比べて発症のリスクが高いという報告があります。